中身が整理されていない
弁護士資格を持っている大学の先生が書いた本.新司法試験や法科大学院が本格的にスタートする前の時点で書かれた本である.タイトルは「法科大学院」だが,中身は法科大学院に限った話ではなく,法治というもの概観,弁護士の日常,昨今の司法試験改革周辺も,それぞれが法科大学院に関する記述と同じぐらいの分量で述べられている.多読の一環としてざっと読む程度の価値はあろうが,明確な目的意識を持って読むような本ではない.読者に配慮して丁寧に書いた形跡は見当たらない.
結構いろんなことが書いてあるので,法律家と縁の遠い生活をしている人がざっと読んで漠然とした知識を増やしたりイメージを掴んだりするためには使えると思う.とくに,弁護士の懐事情(弁護士費用の高さは別に不自然なもんじゃないという見積もりとか),スケジュール管理事情(選んだ道によって暇だったり恐ろしく忙しかったり極端に小刻みだったり),アメリカとの対比(弁護士数増加にともなう専門化とか)は興味深く読めた.一方で,法科大学院に関する記述はニュースのスクラップを出典を整理せずに寄せ集めてコメントを加えた程度だし,法学の一般論については法学の入門書を骨抜きにした程度の内容しかない.「法による支配」と「法律家による支配」のどちらにでもとれる記述が多いという,専門家ならではの文章の下手さもある.
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